そもそもWBGTとは何か
WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)は、気温・湿度・輻射熱(周囲からの熱放射)の3要素を組み合わせた「暑さ指数」です。単なる気温とは異なり、人体が実際に感じる暑さ(熱ストレス)をより正確に表す指標として、ISO規格や厚生労働省のガイドラインで採用されています。「気温31℃でも大丈夫だったから」という感覚的な判断ではなく、WBGTという客観的な指標で管理することが、義務化対応の前提となります。
気温とWBGTにおける判断軸の違い
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項目
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気温
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WBGT
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測定要素
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温度のみ
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温度+湿度+輻射熱の3要素
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人体への影響
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判定しにくい
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より正確に判定
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法令基準での使用
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補助的・感覚的
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客観的な指標(
28
以上で義務化対象)
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測定機器
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温度計
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WBGT
メーター(黒球温度計内蔵型)
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WBGT基準値と熱中症リスクレベル
WBGTの値によって、熱中症のリスクレベルと求められる対応が変わります。なお、義務化の基準は28以上ですが、25~28の「中リスク」段階での予防措置も重要です。28未満であっても熱中症は発生します。
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WBGT
値
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リスクレベル
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目安となる対応
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~
25
未満
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低
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通常の熱中症予防措置を継続
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25
~
28
未満
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中
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こまめな水分補給・休憩の確保
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28
~
31
未満
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高(義務化対象)
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法令上の措置が必要であり、作業制限・設備改善を検討
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31
以上
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非常に高い
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激しい作業・新規従事者は原則禁止レベル
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現場でのWBGT測定手順
正確なWBGT管理のために、以下の手順で測定・記録を行ってください。
ステップ1 測定機器の準備
WBGTの測定には専用のWBGTメーター(黒球温度計内蔵型)が必要です。一般的な温度計・湿度計では代替できません。
- WBGTメーターを準備している
- 電池残量・動作確認が済んでいる
- 測定担当者が操作方法を把握している
ステップ2 測定場所・タイミングの設定
測定は「実際に作業者がいる場所・高さ」で行います。天井付近や壁際の数値は参考になりません。
- 作業者の作業位置(立位:床から1.1m、座位:0.6m)で測定している
- 最も暑くなる時間帯(午前10時~午後3時)を含めて測定している
- 熱源(炉・機械・直射日光が当たる窓)の近くを重点的に測定している
- 測定結果を日付・場所・時間とともに記録している
ステップ3 結果の判定と記録
- WBGT28以上の場所・時間帯を特定している
- 測定記録を台帳などで保存している(労働基準監督署への説明資料として有効)
- 前年同時期との比較記録がある
WBGTを改善するための対策と優先順位
WBGTが高い場合、対策は「環境改善」と「作業管理」の2軸で考えます。環境改善の方がWBGT低減効果は高く、作業管理はあくまで補完的な位置づけです。
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対策種別
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具体策
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WBGT
低減効果
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実施難易度
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環境改善(空調)
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空調設備の導入・増強
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高
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中~高
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環境改善(設備)
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遮熱・断熱材の設置
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中
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中
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環境改善(換気)
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換気設備の強化
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中
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低~中
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作業管理(時間)
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作業時間の分散・休憩の増加
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低~中
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低
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作業管理(作業)
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高温時間帯の作業制限
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低~中
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低
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作業管理(場所)
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涼しい場所への作業移動
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中
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低
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やってしまいがちなNG対策
以下の対策は、効果が限定的であるにもかかわらず「対策をしている」と誤解されやすいケースです。義務化対応の観点からも注意が必要です。
× スポットクーラーで対応しているが、排熱を室内に放出している
(周囲温度が上昇してしまいWBGTが悪化する
)
× 工場扇のみで対応している(風
があ
っ
て
も
輻
射熱
・湿度は改善され
ない)
× WBGT測定なしに「問題ない」と判断している(法令上の記録義務を果たせない)
× 義務化対象外の時間帯のみ対策して終わりにしている(継続的な管理が必要)
現場別WBGT対策チェックリスト
現場の種別によって、優先すべき対策が異なります。自社の現場タイプに合わせて確認してください。
製造工場(熱源あり:炉・溶接・塗装など)
- 熱源周辺のWBGTを重点測定している
- 輻射熱対策(遮熱板・放熱抑制)を実施している
- 局所排気・換気設備が整備されている
- スポット冷却で作業エリアを重点冷却している
倉庫・物流施設(熱源なし・大空間)
- 屋根・壁からの輻射熱対策(断熱・遮熱)を実施している
- 荷役作業エリアのWBGTを測定している
- 全体空調またはゾーン空調で作業エリアを冷却している
- 作業者の動線上に休憩・冷却スポットを設けている
まとめ
WBGTは「測って終わり」ではなく、「測って・判断して・改善して・記録する」という サイクルで運用することが重要です。義務化対応を形だけのものにしないために、本記事のチェックリストを活用し、現場の実態に即した熱中症対策を構築してください。