BEIとは何か? 建築基準法とエネルギー消費性能基準の 基礎をわかりやすく解説
本コラムでは、BEI(Building Energy Index)の基本的な考え方から、建築物省エネ法と建築基準法の関係、省エネ計算における任意評定の仕組み、2025年~2026年の法改正による基準値の変更、ZEBとBEIの関係、そして2030年度に向けた今後の見通しまでを整理してお伝えします。
建築物の省エネ基準への対応が求められる場面が増えています。「 BEI という指標は聞いたことがあるが、具体的に何を示すものなのか」「任意評定を使うと BEI の計算で有利になると聞いたが、どういう仕組みなのか」 設計・設備選定に携わる方のなかには、こうした疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
建築物省エネ法の改正 ― なぜ今、省エネ基準が注目されるのか
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国内のエネルギー消費量の約3割を占める建築物分野の省エネ化が急務とされています。この方針を受けて、建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)が2022年に改正され、2025年4月から施行されています。
この改正の最大のポイントは、原則としてすべての新築建築物に省エネ基準への適合が義務化されたことです。従来は大規模・中規模の非住宅建築物のみが適合義務の対象でしたが、2025年4月以降は、住宅を含むほぼすべての新築建築物が対象となりました。
設計・設備選定に携わるゼネコン・サブコン・設計事務所の皆さまにとって、省エネ基準への対応は避けて通れないテーマになっていると考えられます。
BEI(Building Energy Index)とは
BEIの定義と計算式
BEI(Building Energy Index)は、建築物の省エネ性能を示す指標であり、以下の計算式で算出されます。
BEI = 設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量
- 設計一次エネルギー消費量:その建築物の設計仕様から算定した、年間の一次エネルギー消費量
- 基準一次エネルギー消費量:国が用途・規模・地域ごとに定めた、標準的な建築物の一次エネルギー消費量
BEIの数値が示すもの
BEIは、値が小さいほど省エネ性能が高いことを意味します。
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BEI 値 |
意味 |
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BEI = 1.0 |
基準と同等の省エネ性能 |
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BEI = 0.8 |
基準より 20% 削減(誘導基準水準) |
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BEI = 0.6 |
基準より 40% 削減( ZEB Oriented 水準) |
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BEI = 0.5 |
基準より 50% 削減( ZEB Ready 水準) |
省エネ基準では、 BEI が 1.0 以下であれば基準を満たしているとみなされます。ただし、後述のとおり、建築物の規模や用途によっては 1.0 よりも厳しい基準値が設定されています。
一次エネルギー消費量とは
一次エネルギーとは、石油や天然ガス、水力など、自然界から直接得られるエネルギーのことです。建築物で使用する電気やガス(二次エネルギー)を一次エネルギーに換算して合計することで、異なるエネルギー源を統一的に評価できます。
BEIの計算対象となる設備は、空調・換気・照明・給湯・昇降機(非住宅のみ)です。このうち、非住宅建築物では空調設備が一次エネルギー消費量の大きな割合を占めるケースが多いとされています。
建築基準法との関係 ― 建築確認と省エネ適判の流れ
BEI基準は建築物省エネ法によって定められていますが、その適合審査は建築基準法に基づく建築確認手続きの中で行われます。つまり、2つの法律が連動して省エネ基準の遵守を担保する仕組みになっています。
具体的には、以下のような手続きフローになります。
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STEP |
手続き |
誰が → 誰に |
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1 |
省エネ性能確保計画の作成 |
建築主(設計者) |
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2 |
省エネ適合性判定(省エネ適判)の申請 |
建築主
→
所管行政庁
or |
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3 |
適合判定通知書の交付 |
判定機関 → 建築主 |
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4 |
建築確認申請
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建築主
→
建築主事
or |
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5 |
確認済証の交付 |
確認検査機関 → 建築主 |
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6 |
完了検査
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確認検査機関 → 建築主 |
ここで重要なのは、省エネ適判の適合判定通知書がなければ、建築基準法に基づく確認済証が交付されないという点です。確認済証が交付されなければ工事に着手できないため、省エネ基準への適合は実質的に「着工の前提条件」となっています。
なお、以下のケースでは省エネ適判の手続きが省略され、建築確認審査の中で省エネ基準への適合が確認されます(適合義務自体は免除されません)。
- 仕様基準を用いて省エネ基準に適合する場合
- 設計住宅性能評価書を取得している場合
- 長期優良住宅の認定を受けている場合
省エネ計算の3つの方法
非住宅建築物の省エネ計算には、主に以下の 3 つの方法があります。
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計算方法 |
対象規模 |
精度 |
入力の手間 |
主な用途 |
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標準入力法 |
すべての規模 |
高 |
多い (室毎に入力) |
ZEB 認証、高評価 BELS |
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モデル建物法 |
すべての規模 |
中 |
中程度 (建物用途毎に入力) |
省エネ適判(一般的) |
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モデル建物法
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300 ㎡未満 |
やや低 |
少ない (建物用途毎に入力) |
小規模建築物の適判 |
標準入力法 は建物のすべての部屋について設備機器の詳細を入力するため精度が高く、一般に BEI 値が有利に出やすいとされています。一方、モデル建物法は入力が簡略化されている分、計算上保守的な評価 ( 低めの値 ) になる傾向があります。
任意評定とは ― 省エネ計算でBEIをさらに低減する仕組み
任意評定の定義と目的
任意評定とは、国が定める省エネ計算プログラムの標準的な入力方法では評価しきれない設備の性能について、登録建築物エネルギー消費性能評価機関が個別に評価・認定する制度です。
省エネ計算プログラムには、各設備のエネルギー消費特性があらかじめデフォルト値として組み込まれています。しかし、メーカー独自の技術によってデフォルト値を上回る性能を持つ設備の場合、標準の入力方法ではその性能が十分に反映されません。任意評定を取得することで、実際の性能に基づいた値を省エネ計算プログラムに入力でき、より正確な(結果として有利な)BEI値を算出できるようになります。
なお、従来は物件ごとに任意評定の取得が必要でしたが、制度の見直しにより、機器単体での任意評定取得が可能になっています。これにより、空調メーカーがあらかじめ自社製品の任意評定を取得しておけば、設計者はその結果を Web プログラムに入力するだけ で、部分負荷特性を省エネ計算に反映できるようになりました。
任意評定の仕組み ― なぜBEI低減に貢献するのか
省エネ計算における空調設備の評価は、通常、以下のいずれかの方法で行われます。
- デフォルト値を使用する方法: 省エネ計算プログラムに組み込まれた標準的なエネルギー消費特性を使用。機器固有の性能は反映されない。
- 任意評定書を活用する方法: メーカーが第三者機関の評定を受け、機器固有のエネルギー消費特性を省エネ計算に反映。デフォルト値よりも有利な BEI 値が得られる可能性がある。
たとえば、ビル用マルチエアコン(パッケージエアコンディショナ)の場合、「パッケージエアコンディショナ(空冷式)のエネルギー消費特性に関する任意評定ガイドライン」に基づき、各メーカーにおいて自社製品の任意評定を取得することが出来ます。
任意評定の取得に必要な試験依頼・評定申請・評価書の受領といった手続きは、すべてメーカー側で対応します。建築主や設計者は、メーカーが取得した任意評定書の情報(型名・部分負荷特性式の係数・最小出力比)を Web プログラムの所定のシートに入力するだけで、機器固有の部分負荷特性を省エネ計算に反映できます。
任意評定書取得モデル を選定することで、デフォルト値では反映されない機器固有の高効率性能が省エネ計算に反映され、 BEI 値のさらなる低減 に貢献できる可能性があります。
任意評定が特に有効なケース
任意評定書の活用が特に有効と考えられるのは、以下のようなケースです。
- BEI 基準への適合がギリギリの場合:デフォルト値では基準を満たせない可能性がある場合に、任意評定による実性能の反映で基準適合を実現できる場合がある
- ZEB Ready 以上を目指す場合: BEI ≤ 0.50 の達成には、空調設備の高効率性能を正確に反映することが重要になる
- BELS (建築物省エネルギー性能表示制度)で高い評価を目指す場合: BEI 値が直接星の数に影響するため、任意評定による正確な評価が有利に働く
- 部分負荷運転の時間が長い建物の場合:一般的なオフィスビルでは、冷房期間の 80% 以上が外気温 30℃ 以下の部分負荷運転とされており、部分負荷特性に優れた機器ほど任意評定による BEI 低減効果が大きくなる
任意評定の利用にあたって
任意評定を活用する際に、設計者・建築主側で追加の費用負担が発生するかどうかも気になるポイントかもしれません。省エネ適合性判定(省エネ適判)の審査において、任意評定書を添付する場合でも、一部の登録省エネ判定機関では追加費用が発生しないケースがあります。具体的な取り扱いは判定機関によって異なりますので、事前に確認されることをおすすめします。
BEI基準値はどう変わるのか
BEI基準値は、今後も段階的な引き上げが見込まれています。ここでは、2024年から2030年にかけての主な変更を時系列で整理します。
2025年4月 ― 全新築建築物に省エネ基準適合を義務化
2025年4月の法改正により、原則としてすべての新築建築物に省エネ基準への適合が義務化されました。これまで適合義務の対象外だった住宅や小規模建築物も含め、新築時にはBEI基準を満たす設計が求められるようになっています。
大規模非住宅の基準引き上げ(2024年4月〜)
大規模非住宅建築物(延床面積2,000㎡以上)については、2024年4月から用途別にBEI基準が引き上げられています。
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用途 |
改正前 |
改正後( 2024 年 4 月〜) |
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工場等 |
1.00 |
0.75 |
|
事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等 |
1.00 |
0.80 |
|
病院等・飲食店等・集会所等 |
1.00 |
0.85 |
中規模非住宅の基準引き上げ(2026年4月〜)
2026 年 4 月 1 日 から、中規模非住宅建築物(延床面積 300 ㎡以上 2,000 ㎡未満)の BEI 基準が大幅に引き上げられました。これまでは用途を問わず一律 BEI ≤ 1.0 でしたが、大規模非住宅と同等の水準に強化されています。
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用途 |
改正前(〜 2026 年 3 月) |
改正後( 2026 年 4 月〜) |
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工場等 |
1.00 |
0.75 |
|
事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等 |
1.00 |
0.80 |
|
病院等・飲食店等・集会所等 |
1.00 |
0.85 |
つまり、中規模の事務所ビルやホテルでは、従来のBEI ≤ 1.0からBEI ≤ 0.80へと基準が20%強化されたことになります。この改正は、2026年4月1日以降に省エネ適判を申請する建築物が対象です。
ZEBとBEIの関係
BEI基準の将来的な到達目標を理解するうえで、ZEB(Net Zero Energy Building)との関係を押さえておくことが重要です。ZEBには省エネ達成度に応じた4つの区分があり、それぞれに求められるBEI値が定められています。
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区分 |
再エネを除く BEI |
再エネを含む BEI |
概要 |
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ZEB |
≤ 0.50 |
≤ 0.00 |
一次エネルギー消費量の収支ゼロ |
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Nearly ZEB |
≤ 0.50 |
≤ 0.25 |
ZEB に限りなく近い水準 |
|
ZEB Ready |
≤ 0.50 |
― |
省エネのみで 50% 以上削減 |
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ZEB Oriented |
≤ 0.60 or 0.70 |
― |
用途に応じた削減率
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※ZEB Orientedの削減率は、事務所等・学校等・工場等で40%以上(BEI ≤ 0.60)、ホテル等・病院等・飲食店等・集会所等で30%以上(BEI ≤ 0.70)。延べ面積10,000㎡以上の建築物が対象。
ZEBの達成を目指す場合、BEI ≤ 0.50が最低ラインとなります。現在の省エネ基準(BEI 0.75〜0.85)を大きく上回る省エネ性能が求められるため、高効率空調設備の選定と任意評定の活用がより重要になると考えられます。
2030年度以降 ― さらなる基準強化が見込まれる
政府のエネルギー基本計画等では、2030年度以降に新築される建築物について、ZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能を確保することが目標として掲げられています。
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用途 |
2030 年度目標( BEI ) |
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事務所等・学校等・工場等 |
0.60 |
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ホテル等・百貨店等・病院等・飲食店等・集会所等 |
0.70 |
現在の中規模非住宅のBEI基準(0.75〜0.85)からさらに0.60〜0.70へと引き上げられる可能性があり、今後の設計・設備選定においては、将来の基準強化も視野に入れた対応が求められるようになると考えられます。
BEI基準値の達成に貢献するビル用マルチ空調については、用途・規模に合わせた製品情報をご紹介しています。
BEI基準の達成に向けて ― 空調設備の選定がカギ
空調設備が一次エネルギー消費量に与える影響
BEIの計算対象となる設備(空調・換気・照明・給湯・昇降機)のなかでも、非住宅建築物では空調設備が一次エネルギー消費量の大きな割合を占めるとされています。つまり、空調設備の効率(COP・APF等)を高めることが、BEI低減に直結する可能性があります。
BEIを低減するための主なアプローチ
BEI値を下げるためのアプローチとしては、主に以下の3つが挙げられます。
1.高効率空調設備の採用
COP(エネルギー消費効率)やAPF(通年エネルギー消費効率)の高い空調機器を選定する。さらに、任意評定書取得モデルを選定することで、省エネ計算上のBEI低減効果を最大化できる。
2.外皮性能(断熱性能)の向上
建物の断熱性を高め、空調負荷を低減する。
3.再生可能エネルギーの導入
太陽光発電等の創エネルギーにより、実質的な一次エネルギー消費量を削減する。
なかでも、空調設備の選定は設計段階で比較的取り組みやすく、BEI低減への寄与が大きいアプローチのひとつと考えられます。
まとめ
建築物の省エネ基準(BEI)は、2025年の全新築建物への適合義務化、2026年の中規模非住宅を対象とした基準値引き上げと、段階的に強化が進んでいます。さらに2030年度にはZEB水準(BEI 0.60〜0.70)への引き上げが見込まれており、今後もこの流れは続いていくものと考えられます。
また、BEI基準の適合審査は建築基準法に基づく建築確認手続きの中で行われ、省エネ適判の通知書がなければ確認済証が交付されません。省エネ基準への適合は、単なる努力目標ではなく、建築確認を通過するための必須条件です。
省エネ計算においては、任意評定書を活用することで、空調設備の実際の高効率性能をBEI計算に反映し、基準適合やZEB認証の達成に貢献できる可能性があります。任意評定の取得手続きはメーカー側が行い、設計者はWebプログラムに情報を入力するだけで活用できます。また、一部の判定機関では省エネ適判時に追加費用が発生しないケースもあり、導入のハードルは高くありません。
設計・設備選定に携わる皆さまにとっては、現行基準への適合はもちろん、将来の基準強化も見据えた空調設備の選定が重要なテーマになっていくのではないでしょうか。
