グリーン購入法とは? 業務用エアコンの判断基準と2026年度改定のポイント
グリーン購入法では、国等の機関に環境配慮製品の調達を義務づけています。2026年度の基本方針改定では業務用エアコンディショナーの判断の基準に「常時監視システム」が追加されました。制度の全体像と実務への影響を、環境省の公表資料をもとに整理します。
📌 本記事の対象年度と更新について
本記事は2026年度(令和8年度)の基本方針に基づいています。グリーン購入法の特定調達品目および判断の基準は、毎年度見直しが行われます。
例年、11月頃に改定案のパブリックコメントが実施され、2月頃に変更が閣議決定、3月末までに国等の各機関が調達方針を公表するという流れです。次年度の調達をご検討の際は、必ず環境省の公表情報で最新の基準をご確認ください。
最終更新:2026年10月
グリーン購入法とは
グリーン購入法の正式名称は「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(平成12年法律第100号)です。
環境省は、グリーン購入を「製品やサービスを購入する際に、環境を考慮して、必要性をよく考え、環境への負荷ができるだけ少ないものを選んで購入すること」と説明しています。
本法は平成12年5月に循環型社会形成推進基本法の個別法のひとつとして制定され、平成13年4月から施行されました。
制度の狙い
この法律の特徴は、需要側から市場を変えようとする点にあります。
環境省は制度の目的を、「国等の公的機関が率先して環境物品等(環境負荷低減に資する製品・サービス)の調達を推進するとともに、環境物品等に関する適切な情報提供を促進することにより、需要の転換を図り、持続的発展が可能な社会の構築を推進する」ものと説明しています。
つまり、公共部門という大きな購買力を持つ主体が先に環境配慮製品を選ぶことで、供給側であるメーカーの開発を促し、市場全体を動かすという設計です。
出典:環境省「グリーン購入法について」
誰に、どこまでの義務があるのか
ここは誤解が生じやすい点です。対象者によって義務のレベルが異なります。
| 対象者 | 規定の概要 | 義務のレベル |
|---|---|---|
| 国・独立行政法人等 | 予算の適正な使用に留意しつつ、環境物品を優先的に選択・調達しなければならない | 義務 |
| 地方公共団体・地方独立行政法人 | 自らの業務や事業を行う際、環境に配慮した製品を積極的に選ぶような仕組みづくりや取り組みを行う | 努力義務 |
| 事業者・国民 | 物品を購入・借り受ける際、できる限り環境負荷の少ない環境物品を選択するよう努める | 一般責務 |
環境省も「この法律は、国等の機関にグリーン購入を義務づけるとともに、地方公共団体や事業者・国民にもグリーン購入に努めることを求めています」と整理しています。
実務上の意味
国の機関については、毎年度の調達方針の作成と実績の公表が求められます。
一方、地方公共団体は努力義務にとどまるものの、実態としては調達方針を定めている自治体が相当数あります。環境省が2026年7月に11年ぶりに改訂した「地方公共団体のためのグリーン購入取組ガイドライン」によれば、調達方針の作成状況は都道府県と政令指定都市では100%、市区で40.4%、町村では7.9%となっています。
入札仕様書に適合要件が記載されていれば、義務・努力義務の区別にかかわらず、実質的な参加条件となります。この点が実務上は最も重要です。
出典:環境省「グリーン購入とは」/環境省「地方公共団体のためのグリーン購入取組ガイドライン」(2026年7月改訂)
特定調達品目と「判断の基準」の仕組み
基本方針が毎年度変わる
何を「環境物品」とみなすかは、グリーン購入法第6条に基づく基本方針で定められます。基本方針は、国、独立行政法人及び特殊法人が環境物品等の調達を総合的かつ計画的に推進するために定めるもので、特定調達品目及びその判断の基準についても規定しています。
重要なのは、この基本方針が毎年度見直されるという点です。
直近の改定は2026年2月3日の変更閣議決定で、41品目の判断の基準等の見直し、3品目の新規追加および共通の配慮事項の設定が行われました。環境省は「来年度以降も、引き続き基本方針の変更を検討していく予定」としています。
この改定により、特定調達品目は22分野291品目となりました。
年度ごとの流れ
制度の運用は、おおむね次のサイクルで進みます。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 11月頃 | 改定案に関するパブリックコメントの実施 |
| 2月頃 | 基本方針の変更を閣議決定 |
| 3月末まで | 国等の各機関が調達方針を作成・公表 |
| 翌年度 | 調達方針に基づき調達を実施 |
2026年度の場合、パブリックコメントは令和7年11月11日から12月10日まで実施され、63件の意見が提出されました。その後2026年2月3日に閣議決定されています。
「昨年度は適合していたのに、今年度の基準改定で外れた」という事態が起こり得る制度である、という理解が必要です。
出典:環境省「グリーン購入法基本方針の閣議決定及び意見募集(パブリックコメント)の結果について」(2026年2月3日報道発表)
業務用エアコンディショナーの判断の基準
業務用エアコンディショナーは「エアコンディショナー等」の分野に含まれる特定調達品目です。
基準値1と基準値2
業務用エアコンディショナーの判断の基準には、2段階の水準が設けられています。
| 区分 | 位置づけ |
|---|---|
| 基準値1 | より高い環境性能を満たすもの |
| 基準値2 | 最低限の環境性能を満たすもの |
経済産業省の令和8年度調達方針では、エアコンディショナー等について「調達を実施する品目については、調達目標は100%とする(業務用エアコンディショナーは基準値1を満たすもの)」とされています。
なお、調達目標の設定は機関によって異なります。たとえば国立研究開発法人水産研究・教育機構の令和8年度方針では、業務用エアコンディショナーについて「基準値1の調達目標は75%、基準値2の調達目標は25%」と設定されています。
案件ごとに、発注者がどちらの基準値を求めているかの確認が必要ということです。
判断の基準を構成する要素
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| エネルギー消費効率 | 室内機の種類・冷房能力の区分ごとに基準エネルギー消費効率が定められる |
| 地球温暖化係数(GWP) | 冷媒のGWPに関する基準 |
| 特定の化学物質 | 鉛、水銀、カドミウム、六価クロム化合物等の含有率基準 |
| 常時監視システム | 2026年度改定で追加 |
基準エネルギー消費効率は、室内機の種類(四方向カセット形、床置きダクト接続形など)と冷房能力の区分に応じて算定式が定められており、たとえば複数組合せ形の四方向カセット形で冷房能力3.6kW未満の場合はE=6.0、3.6kW以上10.0kW未満の場合はE=6.0−0.093×(A−3.6)といった形で算出されます(Eは基準エネルギー消費効率、Aは冷房能力)。
出典:経済産業省「令和8年度における環境物品等の調達の推進を図るための方針」/官報 令和8年3月27日号外
2026年度改定のポイント ― 常時監視システムの追加
何が変わったのか
環境省は改定内容の主な見直しとして、「業務用エアコンディショナー等4品目において、常時監視システムの判断の基準、配慮事項又は留意事項に設定」と公表しています。
| 指標 | 改定前 | 改定後(2026年度〜) |
|---|---|---|
| エネルギー消費効率・GWP | 基準値1・基準値2それぞれに設定 | 変更なし |
| 特定の化学物質 | 含有率基準 | 変更なし |
| 漏えい防止 | — | 常時監視システムを使用したものであること |
つまり、従来の性能基準に変更はなく、新たな要素が1つ加わったという構造です。
なぜ追加されたのか
この改定は、フロン類の大気放出を抑制するという政策的な流れに沿ったものです。
業務用冷凍空調機器の冷媒に使用されるフロン類は、オゾン層破壊物質であり高い温室効果を持つことから、排出抑制対策が求められています。とりわけ機器の使用時における漏えいの早期発見は、フロン排出抑制法においても重要な課題とされてきました。
グリーン購入法の判断の基準に常時監視システムが加わったことで、公共調達の場面でも「漏えいを早期に検知できる仕組み」が求められるようになったと理解できます。
フロン排出抑制法における点検義務の考え方については「フロン排出抑制法の点検義務|対象機器・点検頻度・罰則を実務目線で整理」で解説しています。
常時監視システムとは何か
定義
常時監視システムとは、冷媒の漏えい又は機器の故障等を常時監視するシステムを指します。
この定義は、フロン排出抑制法に基づく「第一種特定製品の管理者の判断の基準となるべき事項」(平成26年経済産業省・環境省告示第13号)第二1(2)①に規定されるものです。具体的には、次のような機能が求められます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 計測 | 冷媒系統ごとの圧力、温度その他の漏えいを検知するために必要な状態値を1日に1回以上計測する |
| 診断 | 状態値の異常又は変化に基づき、漏えい又は漏えいの疑いがあるか否かを1日に1回以上診断する |
| 記録 | 計測した状態値又は診断の結果を1日に1回以上記録し、1年以上保存する |
| 通知 | 漏えい又は漏えいの疑いを検知した場合、管理者に対し、管理者以外の者が容易に解除できない方法により直ちに診断結果を通知する |
| 検知性能 | 適正な充塡量の30%の冷媒が漏えいするまでに、漏えいの判定が可能であることが確認されている |
検知性能については、製品群ごとに日本冷凍空調工業会標準規格(JRA)もしくは日本産業規格(JIS)で規定された条件、または製品ごとにカタログに記載された条件で試験が行われている必要があります。
本体内蔵型に限定されない
実務上、最も誤解が生じやすいのがこの点です。
常時監視システムは、本体に内蔵・搭載されているタイプに限定されません。別売りの専用機器を本体に接続するタイプも含まれます。
この点については、改定案の検討段階で「内蔵型に限定されているように見える」という意見が業界から寄せられ、告示案に「(本体に内蔵・搭載されているタイプと別売りの専用機器を本体に接続するタイプの両方を含む。)」という文言が追記された経緯があります。したがって、集中コントローラ、BMS、IoTゲートウェイ、遠隔監視サービス等を組み合わせる構成も、要件を満たせば適合の対象となり得ます。
重要なのは「いつ利用可能か」
ただし、条件があります。空調機本体の使用開始時点で、必要な機器の設置・接続と、必要な場合のサービス契約が完了し、監視・診断・記録・通知の要件を満たすシステムが利用可能な状態であることが求められます。
| ケース | 状態 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 同時導入 | 空調機の使用開始までに監視機器を接続し、必要な契約も締結済み | 適合し得る |
| 別売り機器を後付け施工 | 施工上は後付けでも、使用開始時点で監視システムが利用可能 | 適合し得る |
| 運転開始後に追加 | 空調機だけを先に使用し、数か月後に監視機能を追加 | 使用開始時点の要件を満たさない可能性 |
| 契約未締結 | 機器は接続済みだが、必要な監視サービスが利用できない | 適合成立は困難 |
「後付けできるかどうか」ではなく、「使用開始時点で利用可能かどうか」が判断の分かれ目になります。
実務で押さえておきたい3つの論点
論点① 判断の基準は「発注年度」で決まる
2026年度の改定は、2026年度発注分からの適合方針です。2025年度発注分については、2025年度時点の適合条件で問題ありません。
注意が必要なのは、設計と発注の年度が異なるケースです。空調設備では、設計が固まってから実際の発注までに年度をまたぐ案件が少なくありません。たとえば設計決定が2025年度、発注が2026年度という場合、どちらの基準が適用されるのかは発注者の判断によります。
まず確認すべきは「この案件の発注年度はどちらか」です。年度をまたぐ案件では、発注者に都度ご確認ください。
論点② 「製品単体の適合」とは言い切れない
改定後は、適合が「製品+運用システム」で成立します。
| 段階 | 要素 |
|---|---|
| 1 | 製品本体 ― 性能・GWP・化学物質基準 |
| 2 | 漏えいアラート ― 漏えい検知情報を出力 |
| 3 | 常時監視 ― 計測・診断・記録・通知 |
| 4 | 必要な契約 ― サービス利用を開始前に締結 |
このすべてが使用開始時点で利用可能であって、はじめて適合状態となります。
そのため、カタログ等で「グリーン購入法 適合製品」という表現を見かけた場合も、監視装置やサービス契約が別途必要かどうかの確認をおすすめします。製品本体だけで適合すると誤認すると、納入後に要件を満たさないという事態になりかねません。
論点③ 基準値1か基準値2かを確認する
前述のとおり、業務用エアコンディショナーには基準値1と基準値2があり、機関によって調達目標の設定が異なります。
入札仕様書に「グリーン購入法適合」とのみ記載されている場合、どちらの基準値が求められているかを発注者に確認しておくと、後の手戻りを防げます。
よくある質問(Q&A)
Q1. 地方自治体の案件でも、グリーン購入法への適合は必須ですか?
法律上、地方公共団体は努力義務です。ただし、入札仕様書に適合要件が明記されている場合は、実質的な参加条件となります。仕様書の記載をご確認ください。
Q2. 常時監視システムは、本体内蔵型でなければいけませんか?
いいえ。別売りの専用機器を本体に接続するタイプも含まれます。ただし、空調機本体の使用開始時点で当該システムが利用可能な状態であることが必要です。
Q3. 2025年度に設計した案件は、新基準への対応が必要ですか?
本改定は2026年度発注分からの適合方針です。2025年度発注分は2025年度時点の条件で問題ありません。ただし、設計と発注の年度が異なる場合は、どちらの基準が適用されるか発注者にご確認ください。
Q4. 基準値1と基準値2の違いは何ですか?
基準値1は「より高い環境性能を満たすもの」、基準値2は「最低限の環境性能を満たすもの」という位置づけです。調達目標の設定は機関により異なります。
Q5. 判断の基準は今後も変わりますか?
はい。基本方針は毎年度見直しが行われます。環境省も「来年度以降も、引き続き基本方針の変更を検討していく予定」としています。年度ごとに最新の基準をご確認ください。
Q6. 適合状況はどこで確認できますか?
環境省の公表資料のほか、グリーン購入ネットワーク(GPN)が運営する「エコ商品ねっと」でも適合情報が掲載されています。機種ごとの詳細については、メーカーへお問い合わせください。
まとめ|ラインアップのご案内
- グリーン購入法は、国等の機関に環境物品の調達を義務づけ、地方公共団体には努力義務、事業者・国民には一般責務を定めた法律です。
- 特定調達品目と判断の基準は毎年度見直しが行われ、直近では2026年2月3日に変更が閣議決定されました。
- 2026年度改定で、業務用エアコンディショナーの判断の基準に常時監視システムが追加されました。
- 常時監視システムは本体内蔵型に限定されず、別売り機器を接続する構成も対象となり得ます。
- ただし、空調機本体の使用開始時点で利用可能な状態であることが条件です。
- 適合は「製品+運用システム」で成立するため、機器選定と監視システムをセットで検討する必要があります。
日本キヤリアのラインアップ
日本キヤリア株式会社では、以下のシリーズに令和8年度版グリーン購入法の基準値をクリアする機種をラインアップしています。
※ご確認ください※
各シリーズには、グリーン購入法の基準値をクリアしない機種・形名も含まれます。
シリーズ内のすべての機種が対象となるわけではありません。
また、基準値をクリアする機種であっても、別途「常時監視システム」への対応が必要です。
対象となる形名は、こちらの対象機種一覧をご確認ください。
<ビル用マルチ空調システム>
- スーパーマルチu ― 中〜大規模ビル向け。DCトリプルロータリーコンプレッサー搭載
- スーパーマルチu mini ― 小〜中規模ビル向け。配管総延長300mで設計自由度が高いモデル
<店舗・オフィス用カスタムエアコン>
- ウルトラパワーエコ/スーパーパワーエコゴールド/スマートエコneo ― 用途と重視するポイントに応じて選べる室外機ラインアップ
※ 設備用パッケージエアコンについては、順次対応を進めております。
- 入札仕様書に記載された要件への対応可否、対象形名、常時監視システムの構成は、案件ごとに異なります。基準値1・基準値2の判断を含め、下記お問い合わせ窓口よりお気軽にご相談ください。
