BEI(Building Energy Index)とは
BEIの定義
BEIとは、建築物省エネ法において、建築物の省エネ性能を示す指標です。国が用途・規模・地域ごとに定めた「標準的な建築物のエネルギー消費量」を1としたとき、実際に設計した建築物のエネルギー消費量が何割にあたるかを数値で表します。
BEIの計算式
BEIは、以下の計算式で求められます。
BEI = 設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量
3つの用語を整理すると次のとおりです。
用語
意味
設計一次エネルギー消費量
その建築物の設計仕様から算定した、年間の一次エネルギー消費量
基準一次エネルギー消費量
国が用途・規模・地域ごとに定めた、標準的な建築物の一次エネルギー消費量
一次エネルギー消費量
石油・天然ガス・水力など、自然界から直接得られるエネルギー量に換算した消費量
BEIの計算対象となる設備は、空調・換気・照明・給湯・昇降機(非住宅のみ)の5つです。
BEIの数値が示すもの
BEIは、値が小さいほど省エネ性能が高いことを意味します。
BEI値
意味
BEI ≦ 1.0
建築物省エネ法の省エネ基準と同等の性能
BEI ≦ 0.8
上記の基準値より20%削減
BEI ≦ 0.6
上記の基準値より40%削減
BEI ≦ 0.5
上記の基準値より50%削減
省エネ基準では、BEIが1.0以下であれば基準を満たしているとみなされます。ただし、後述のとおり建築物の規模や用途によっては、1.0よりも厳しい基準値が設定されています。
なぜ今BEIが注目されているのか
2025年4月|全新築建物への義務化
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、国内のエネルギー消費量の約3割を占める建築物分野の省エネ化が急務とされています。この方針を受けて建築物省エネ法が2022年に改正され、2025年4月から施行されました。
改正の最大のポイントは、原則としてすべての新築建築物に省エネ基準への適合が義務化されたことです。従来は大規模・中規模の非住宅建築物のみが対象でしたが、2025年4月以降は住宅を含むほぼすべての新築建築物が対象となりました。
2026年4月|中規模非住宅の基準強化
2026年4月からは、中規模非住宅建築物(延床面積300㎡以上2,000㎡未満)のBEI基準がさらに引き上げられました。これまで用途を問わず一律「BEI ≦ 1.0」だったものが、大規模非住宅と同じ水準に強化されています。
つまり、中規模の事務所ビルやホテル、病院などでは、これまで以上に高い省エネ性能が設計段階で求められることになります。
2026年基準の詳細と実務対応は、「BEIとは何か?建築基準法とエネルギー消費性能基準の基礎をわかりやすく解説」 で詳しく解説しています。
BEIの基準値|用途・規模別の一覧
2026年4月以降の非住宅建築物のBEI基準値は、用途別に以下のとおり定められています。
用途
BEI基準値
設計上の見方
工場等
BEI ≦ 0.75
基準から25%の削減が必要
事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等
BEI ≦ 0.80
基準から20%の削減が必要
病院等・飲食店等・集会所等
BEI ≦ 0.85
基準から15%の削減が必要
出典:国土交通省「中規模の非住宅建築物の省エネ基準が変わります」
基準を満たさない場合、省エネ適合性判定でNGとなり、建築確認申請が通らなくなるため、実質的に「着工の前提条件」となります。
BELSとZEH/ZEB水準
BEIは、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)における星評価にも活用されます。星の数が多いほど省エネ性能に優れた建築物であることを示し、住宅では星3つでZEH水準、非住宅では星4〜5つでZEB水準を達成できます。
BEIを下げる3つの方法
なぜ空調がBEI対応のカギなのか
BEIの計算対象は空調・換気・照明・給湯・昇降機の5設備ですが、非住宅建築物では用途を問わず、空調が一次エネルギー消費量の最大の割合を占めています。
図:各建物用途におけるエネルギー使途別の消費内訳 出典:関東経済産業局「中小企業の支援担当者向け省エネ導入ガイドブック」より作成
近年、照明のLED化が広く進んだ結果、照明での削減余地は狭まりつつあり、空調設備の効率や制御方式の違いがBEI値の差に直結しやすくなっています。したがって、BEI対応の効果を最大化するには、空調設備の選定が最も重要なテーマになります。
以下、BEIを下げる3つの主要アプローチを整理します。
(1)高効率空調設備の採用
COP(エネルギー消費効率)やAPF(通年エネルギー消費効率)の高い空調機器を選定することが、BEI低減に直結します。さらに、任意評定書取得モデルを選定することで、機器固有の高効率性能を省エネ計算に反映でき、BEI低減効果を最大化できる可能性があります。
空調設備の具体的な選定手順は、「BEI基準を設備設計で達成するための空調選定ポイント」 で解説しています。
(2)外皮性能(断熱)の向上
高性能な断熱材やLow-E複層ガラスなどの採用で、室内外の熱の出入りを抑制できます。これにより空調負荷が下がり、結果としてBEI値の改善につながります。
(3)再生可能エネルギーの導入
太陽光発電システム等で創出したエネルギーは、一次エネルギー消費量から差し引くことができるため、BEI値の大幅な改善に寄与します。ZEBを目指す場合には特に有効なアプローチです。
BEIに関するよくある質問(Q&A)
Q1. BEI = 1.0なら十分ですか?
いいえ。2026年4月以降、中規模非住宅では用途別にBEI ≦ 0.75〜0.85が求められます。「1.0以下ならOK」は誤解で、用途によっては15〜25%の削減が必要です。
Q2. 高効率空調を入れれば必ずBEIは下がりますか?
必ずしもそうではありません。省エネ計算方法(標準入力法/モデル建物法)や、任意評定書の活用有無によって、同じ機器でもBEI値の反映度が変わります。
BEIの計算方法と任意評定を詳しく見る
Q3. ZEB Readyを目指すには、BEIをいくつにする必要がありますか?
再エネを除いてBEI ≦ 0.50が目安です。省エネのみで50%以上の削減が求められる水準で、達成には高効率空調設備の選定と任意評定の活用が重要になります。
Q4. 任意評定とは何ですか?
メーカー独自の技術によりデフォルト値を上回る性能を持つ機器について、第三者機関が個別に評価・認定する制度です。任意評定書を活用すれば、機器固有の部分負荷特性を省エネ計算に反映でき、BEI値をより正確に(結果として有利に)算出できる可能性があります。
任意評定の仕組みを詳しく見る
Q5. BEIは建築基準法とどう関係しますか?
BEI基準は建築物省エネ法で定められていますが、適合審査は建築基準法に基づく建築確認手続きの中で行われます。省エネ適合性判定の通知書がなければ確認済証が交付されず、着工できません。
まとめ|設計初期の情報整理がBEI対応の第一歩
BEIは、建築物の省エネ性能を示す指標で、値が小さいほど省エネ性能が高いことを意味します。
2025年4月から全新築建物への義務化、2026年4月から中規模非住宅の基準強化と、段階的に強化が進んでいます。
非住宅では、空調が一次エネルギー消費量の最大割合を占めるため、空調設備の選定がBEI対応で最も重要です。
BEIを下げるには、(1)高効率空調設備の採用、(2)外皮性能の向上、(3)再生可能エネルギーの導入、の3つが基本アプローチです。
標準入力法・モデル建物法の違いや任意評定の活用など、設計初期の情報整理がBEI対応の勝負どころになります。