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データセンター 冷却の最新トレンド|AIサーバーの高発熱化がもたらす空調課題とモジュールチラーの役割

AIサーバーの高発熱化によってデータセンターの冷却環境がどのように変化しているのかを整理するとともに、冷却システムが抱える課題や、近年注目されているモジュールチラーの役割について解説します。

生成AIの普及に伴い、データセンターでもAIサーバーの導入が急速に進んでいます。それに伴い、サーバーから発生する熱も増加しており、冷却設備にはこれまで以上に高い性能が求められるようになりました。

 

一方で、データセンターでは設置スペースや設備の拡張性、安定稼働なども考慮しなければならず、「空調設備は温度管理だけをすればよい」という時代ではなくなっています。また、液冷技術の普及によって、冷却システムの役割や熱源設備のあり方も変化しています。

 

本記事では、AIサーバーの高発熱化によってデータセンターの冷却環境がどのように変化しているのかを整理するとともに、冷却システムが抱える課題や、近年注目されているモジュールチラーの役割について解説します。

 

なぜ、データセンターのサーバーの高発熱化が注目されているのか

 

近年、データセンターの冷却設備が注目される背景には、生成AIの普及があります。
生成AIは、文章や画像の生成など膨大なデータを高速で処理するために、高性能なAIサーバーを必要とします。AIサーバーには、GPUが複数搭載されているものが多く、従来のサーバーと比べて消費電力や発熱量が大幅に増加しています。

 

こうしたAIサーバーは、ラック(サーバーを収納する棚)単位で設置されます。従来のラック当たりの消費電力は数kW程度が一般的でしたが、AIサーバーの普及により、10~14kWに増加しています。さらに将来的には100~1000kWを超えるケースも想定されています。

 

消費電力が増えるということは、それだけ発熱量も増えるということです。例えば、現在のAIサーバーラックで一般的な約14kWの熱負荷は、公立の小中学校で導入が進む学校空調における教室1部屋分の冷房能力とほぼ同程度です。今後、ラック当たりの熱負荷が100kWを超えるようになれば、従来とは比較にならないほど大きな熱を処理しなければならず、冷却設備にはこれまで以上に高い性能が求められます。

 

データセンターでは、サーバーが適切な温度で稼働し続けることが重要です。十分に冷却できない状態が続くと、サーバー内部の温度が急激に上昇し、性能低下や停止につながる熱暴走が発生する可能性があります。サービス停止は利用者への影響だけでなく、事業者にとっては大きな機会損失や損害賠償につながるおそれもあるため、冷却設備の重要性がこれまで以上に高まっています。

 

このように、AIサーバーの高発熱化は、単に「室内の温度管理のために、より大きな空調設備を導入すればよい」という問題に留まりません。限られたスペースの中で効率よく熱を処理し、安定した運用を維持するための冷却システム全体を見直すことが、データセンターにおける新たな課題となっています。

 

AIサーバーの普及によるラックあたり消費電力の変化

従来のデータセンター AI時代のデータセンター
約14kW/ラック 100kW以上/ラック

 

データセンター 冷却 システムの限界と設置スペースの課題

 

AIサーバーを用いることで高発熱化が進み、冷却すべき熱量が増えると、熱を建物の外へ逃がすための設備にも、より高い処理能力が求められるようになります。

 

データセンターでは、サーバーの熱を効率よく排出するために、チラー(冷たい水をつくり、建物や設備の冷却に利用する熱源設備)をはじめ、冷却塔(水を利用して熱を外へ放出する設備)やドライクーラー(ファンを使って外気へ熱を逃がす放熱設備)など、複数の設備を組み合わせて排熱・冷却システムを構成しています。

 

しかし、サーバーの発熱量が増えれば、それに応じて排熱設備にもより大きな能力が必要になります。一般的に、設備の処理能力を高めるには機器自体を大型化したり、設置台数を増やしたりする必要があり、その分だけ設置スペースも必要になります。

 

一方で、多くのデータセンターでは敷地や建物内の設備スペースに限りがあります。サーバーを増設したくても、冷却設備を設置するスペースが確保できず、設備計画の制約になるケースも少なくありません。

 

また、排熱設備は筐体(排熱を行う機器本体)の大きさに応じて処理できる熱量がおおよそ決まっています。そのため、単純に能力を高めようとすると、設置面積も比例して増えてしまいます。

 

こうした背景から近年では、「どれだけ大きな設備を導入できるか」ではなく、「限られた設置スペースで、どれだけ多くの熱を処理できるか」という視点が重要になっています。

 

そのため、データセンターの冷却設備を検討する際は、空調方式だけでなく、限られたスペースで効率よく冷水を供給できる熱源設備の選定も重要なポイントとなります。

 

液冷の普及でデータセンター 冷却 チラーは不要になる?インフラ担当者が陥る誤解

 

近年、AIサーバーの高発熱化への対応策として、サーバー内を空気ではなく冷却液で冷やす液冷が注目されています。

 

液冷は、サーバー内部で最も発熱するCPUやGPUなどのチップに冷却液を循環させ、効率よく熱を回収できるため、従来の空冷方式では対応が難しい高発熱サーバーの冷却方法として導入が進んでいます。

 

その一方で、「液冷が普及すれば、チラーは不要になるのではないか」と考えられることがあります。しかし、実際にはこれは誤解です。

 

液冷はあくまでも、サーバーから熱を効率よく取り出す仕組みです。冷却液が回収した熱は、最終的には建物の外へ放出する必要があります。

 

そのため、液冷システムではCDU(Coolant Distribution Unit:液冷で温まった冷却液の熱を、建物側の冷却水へ受け渡す装置)を介して熱を移動させ、さらにドライクーラーや冷却塔などの設備によって屋外へ放熱します。

 

また、液冷だけですべての設備を冷却できるわけではありません。一般的なコールドプレート方式では、主にCPU/GPUなどの高発熱部品を対象としています。一方で、サーバー内のその他の部品や、サーバーが設置されている室内全体の空調は、従来どおり空気による冷却が必要になります。

 

さらに、外気条件や設計水温によっては、必要な放熱能力を確保するために設置面積が大きくなる場合があります。限られたスペースで効率よく冷却システムを構成するためには、熱源設備の選定も重要な検討項目です。

 

このように、液冷はデータセンターの冷却技術として重要な役割を担っています。しかし、「熱をなくす技術」ではありません。AIサーバーの高発熱化が進むほど、回収した熱を安定して処理するための熱源設備は引き続き必要となります。そのため、液冷が普及した将来においても、高効率なチラーはデータセンターを支える重要な設備であり続けると考えられます。

 

空冷と液冷の比較

 

「空冷と液冷の比較」

  空冷 液冷
冷却対象 サーバー全体やデータホール CPU・GPUなど高発熱部品
サーバー内の冷却媒体 空気 冷却液
熱源設備(チラーなど)の必要性 必要 必要
データホール空調 必要 必要(液冷だけでは賄えない)

 

絶対に止められないデータセンターの運用リスクをどう分散するか

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データセンターでは、サーバーを安定して稼働させ続けることが何よりも重要です。そのため、冷却設備にも「故障しないこと」だけでなく、「万が一故障しても運用を継続できること」が求められます。

 

こうした考え方を「冗長性(設備の一部が停止しても、予備設備によって運用を継続できる仕組み)」といいます。

 

データセンターでは一般的に、必要な設備に加えて予備設備を1台用意する「N+1構成」や、さらに余裕を持たせた「N+2構成」が採用されます。例えば、設備が10台必要な場合は11台目を予備として設置し、1台が停止しても運用を継続できるようにします。

 

一方で、大容量のチラーを採用する場合は、この予備設備が過大になってしまうことがあります。

 

例えば20MW(メガワット)の冷却能力が必要な場合、2MWの設備10台で構成すると、N+1構成では予備設備は2MWとなります。
一方、200kW(0.2MW)の設備100台で構成した場合、N+1構成で追加する予備設備は200kWです。
このように、1台あたりの設備容量が小さいほど、N+1構成で確保する予備容量を細かく設定できるため、必要以上の設備容量を持たずに済みます。
20MWの冷却能力が必要な場合、2MWの設備では予備容量は必要能力の10%ですが、200kWの設備では1%となります。その結果、設備費などのCAPEX(設備の導入時に必要となる初期投資)を抑えやすくなる点も、小容量機器を組み合わせるメリットの一つです。

 

そのため、近年では、単に冷却能力だけでなく、「必要な冗長性を確保しながら、無駄のない設備構成を実現できるか」という視点も、熱源設備を選定する重要なポイントになっています。

 

【熱源設備の構成によって「+1」の大きさは変わる】

  200kW(0.2MW)の
熱源設備を使用する場合
2MWの熱源設備を
使用する場合
必要能力 20MW 20MW
構成 200kW×100台 2MW×10台
N+1構成(予備容量) +200kW(1台) +2MW(1台)
合計能力 20.2MW 22MW
予備設備が必要能力に
占める割合
1% 10%

 

リスク分散とコスト効率を両立するモジュールチラーの優位性

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ここまで見てきたように、データセンターでは冷却能力だけでなく、冗長性や設置スペース、将来的な拡張性など、さまざまな要件を満たす熱源設備が求められます。こうした背景から近年注目されているのが、複数の小型チラーを組み合わせて必要な能力を構成するモジュールチラーです。

 

モジュールチラーは、比較的小さな能力のチラーを複数組み合わせて運転するため、設備全体でリスクを分散しやすいという特徴があります。

 

また、前章で紹介したN+1構成においても、小容量のモジュールを組み合わせることで、予備設備として確保する容量を小さく抑えられます。その結果、必要以上の設備容量を持たずに済み、初期投資を効率よく計画しやすくなります。

 

さらに、データセンターでは停電時における熱源設備の立ち上がりの早さも重要です。停電発生後もサーバーはUPS(Uninterruptible Power Supply:停電時でも一定時間電力を供給する無停電電源装置)によって稼働を続けるため、発熱は継続します。そのため、熱源設備が停止している間は、配管内のバッファタンク(冷たい冷却水を一時的に蓄えておくタンク)の冷水で冷却を維持し、熱源設備の復旧を待つ構成が一般的です。熱源設備の立ち上がりが早いほど、必要となるバッファタンク容量を小さく抑えられるため、設備計画にもメリットがあります。

 

近年では、停電復旧後約120秒で圧縮機の運転容量を100%まで回復できるモジュールチラーも登場しており、冷却能力を早期に立ち上げられることから、運用継続性の向上に貢献しています。

 

将来的な設備拡張に柔軟に対応しやすい点も、モジュールチラーのメリットです。データセンターでは、テナントの入居状況やAIサーバーの増設に合わせて冷却能力を段階的に増強するケースも少なくありません。モジュールチラーであれば、必要なタイミングでユニットを追加しやすく、将来の設備計画にも柔軟に対応できます。

 

このように、モジュールチラーは「冷やす設備」という役割だけでなく、データセンターに求められる安定運用や設備投資の最適化、将来の拡張性まで考慮した熱源設備として注目されています。

 

まとめ

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生成AIの普及に伴い、データセンターではAIサーバーの高発熱化が進み、冷却設備にはこれまで以上に高い性能や安定性が求められるようになっています。

 

また、液冷技術が普及しても、回収した熱を建物の外へ放出する熱源設備の重要性は変わりません。さらに、限られた設置スペースへの対応や、設備の冗長性、将来的な拡張性なども考慮した設備計画が重要になっています。

 

こうした課題に対応するには、単に冷却能力を高めるだけではなく、データセンター全体の運用を見据えた熱源設備の選定が欠かせません。その選択肢の一つとして、リスク分散や設備投資の最適化、柔軟な拡張性を実現しやすいモジュールチラーが注目されています。

 

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