ZEB補助金【2026年度版】施主が知るべき国の制度の全体像と申請の進め方
2026年度(令和8年度)にZEB化で活用できる国の補助制度を、経済産業省・環境省・国土交通省の3省庁横断で整理。補助率・上限・公募時期・申請の段取りを、発注権を持つ施主・オーナー向けにまとめました。
📌 本記事の対象年度と更新について
本記事は2026年度(令和8年度)の公表情報に基づいています。ZEB関連の補助制度は、毎年度、補助率・上限額・公募時期・要件が変わります。
国の各制度は例年3月下旬〜6月に当年度の一次公募が開始されるため、次年度の検討にあたっては、必ず各執行団体が公表する最新の公募要領をご確認ください。本記事は年度替わりのタイミングで内容を更新しています。
最終更新:2026年9月
なぜ補助金から逆算するのか
ZEB化の検討では、多くの場合「まず設計を固め、その後に使える補助金を探す」という順序をとりがちです。しかし、この進め方には無理があります。
国の補助制度は、当年度の予算に基づいて公募期間が設定されており、締切を過ぎれば翌年度まで待つことになります。後述のとおり、2026年度の主要制度の公募は春から夏にかけて集中しており、秋以降に検討を始めた場合、当年度の申請枠はすでに閉じているケースが少なくありません。
加えて、多くの制度では交付決定前に工事の発注や契約を行うと補助対象外となるという共通ルールがあります。つまり、補助金の活用を前提とするなら、着工時期そのものが公募スケジュールに拘束されるということです。
企画の初期段階で「どの制度を、いつ申請するか」の地図を描いておくことが、結果的にコスト計画の精度を高めます。
前提|ZEBの4区分と規模のおさらい
補助対象や補助率は、目指すZEBの区分と建物の延べ面積によって変わります。まず、この2軸を押さえておきます。
| 区分 | 省エネのみ(再エネを除く) | 再エネを含む |
|---|---|---|
| 『ZEB』 | 50%以上削減 | 100%以上削減 |
| Nearly ZEB | 50%以上削減 | 75%以上100%未満削減 |
| ZEB Ready | 50%以上削減 | 要件なし |
| ZEB Oriented | 用途別に30〜40%以上削減+未評価技術の導入 (延べ面積10,000㎡以上が対象) |
要件なし |
出典:環境省 ZEB PORTAL「ZEBの定義」
各区分の詳しい内容や、BEIとの関係については「ZEBとは? 4つの区分・BEIとの関係・実現ステップをわかりやすく解説」で解説しています。
規模の区切りも重要です。後述のとおり、経済産業省の制度は大規模建築物、環境省の制度は中小規模建築物と、おおむね棲み分けがなされています。自社の建物の延べ面積がどちらに該当するかで、見るべき制度が変わります。
2026年度の主な国の支援制度マップ
2026年度に全国を対象として実施されている、国の主なZEB関連支援制度は次のとおりです。
| 制度 | 所管/執行団体 | 主な対象 | 補助率・上限(目安) |
|---|---|---|---|
| ZEB実証事業 | 経済産業省/環境共創イニシアチブ(SII) | 新築:延べ面積10,000㎡以上 既存:延べ面積2,000㎡以上 |
区分により1/3以内〜1/2以内 上限3億円/年 |
| ZEB化診断・計画策定支援事業 | 経済産業省/環境共創イニシアチブ(SII) | 既存建築物の診断・計画策定 | 1/2以内 上限200万円/件 |
| 建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業 | 環境省/静岡県環境資源協会ほか | 業務用建築物の新築・既存(中小規模中心) | 区分により1/6〜2/3 上限3〜5億円 |
| 既存建築物省エネ化推進事業(LCCO₂評価実施型) | 国土交通省 | 既存建築物の省エネ改修 | 1/3 上限5,000万円 |
出典:資源エネルギー庁「令和8年度住宅・建築物需給一体型等省エネルギー促進事業」、環境省「令和7年度補正予算(三次公募)・令和8年度予算(二次公募)『建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業』の公募開始について」、国土交通省「『建築物の省エネ改修工事』の提案募集を開始します!」
※ 補助率・上限額は2026年度の公表情報に基づく目安です。詳細な要件・金額は必ず各執行団体の公募要領でご確認ください。
以下、それぞれの制度を見ていきます。
経済産業省|ZEB実証事業(大規模向け)
経済産業省が資源エネルギー庁の事業として実施し、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が執行する制度です。新築ZEBと既築ZEB化の双方を支援対象としており、既築ZEB化については、全体のZEB化を見据えたテナントビルの部分的な改修も対象に含まれます。
2026年度に新設された2区分
2026年度は、従来の「A. ZEB化事業」に加え、2つの区分が新設されました。
| 区分 | 内容 | 補助率 |
|---|---|---|
| A. ZEB化事業 | 新築ZEBおよび既存建築物のZEB化 | 新築:1/3以内 既築:1/2以内 |
| B. 既存テナント事業【新設】 | 延べ面積の過半がテナント貸出対象である既存建築物の設備改修 | 新築:対象外 既築:1/2以内 |
| C. 未評価技術単独事業【新設】 | WEBPRO未評価技術を新築または既存建築物へ1項目以上導入し、実証を行う事業 | 1/2以内 |
補助金額の上限は、各公募区分共通で3億円/年です(複数年度事業の場合、事業全体の上限は7億円)。
対象建築物の要件
- 新築:延べ面積10,000㎡以上。事務所等、ホテル等、病院等、百貨店等、学校等、集会所等、飲食店等、CLT等を活用した建築物
- 既築:延べ面積2,000㎡以上。用途は新築と同様
C区分の対象となる未評価技術については、「CO2濃度による外気量制御」「照明のゾーニング制御」「超高効率変圧器」が除かれる点に留意が必要です。
出典:資源エネルギー庁省エネルギー課「令和8年度住宅・建築物需給一体型等省エネルギー促進事業 ZEB実証事業/ZEB化診断・計画策定支援事業」(2026年7月17日)
経済産業省|ZEB化診断・計画策定支援事業【2026年度新設】
2026年度に新設された制度で、既存建築物のZEB化に着手する前の段階、つまり現状の診断と具体的な計画策定そのものを支援対象とするものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象 | ZEB化診断およびZEB化計画策定 |
| 補助率 | 1/2以内 |
| 補助額 | 上限200万円/件、下限20万円/件 |
| 対象建築物 | 事務所等、ホテル等、病院等、百貨店等、学校等、飲食店等、集会所等 |
| 申請対象者 | 日本国内の既存建築物においてZEB化診断・計画策定業務を受注するZEBプランナー(フェーズ3に新規登録・継続登録済みの法人) |
| 公募期間 | 2026年6月26日(金)〜2026年10月16日(金)17時締切 |
| 事業期間 | 交付決定日〜2026年12月28日(月) |
補助対象となる業務は、(1)基本情報収集(建物所有者の要望ヒアリング、既存資料の入手・整理)、(2)ZEB化診断(WEBプログラム計算、計算根拠の整理)、(3)ZEB化計画策定(計画の立案、設計図・設計図書等の作成、改修費用の算出)、(4)結果とりまとめ、という流れで構成されます。
「ZEB化を検討したいが、何から手をつければよいか分からない」という段階の方にとって、最初の一歩として活用しやすい制度といえます。なお、申請者はZEBプランナーであるため、建物所有者は業務を委託する形での関与となります。
※ 予算状況に応じて、早期に公募期間を終了する可能性があるとされています。
出典:環境共創イニシアチブ(SII)「令和8年度 ZEB化診断・計画策定支援事業」
環境省|建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業(中小規模向け)
環境省が実施する制度で、主に中小規模の業務用建築物を対象としています。2026年度は6つの支援メニューで構成されています。
| 事業名 | 支援内容 | 執行団体 |
|---|---|---|
| (1)新築建築物のZEB普及促進支援事業 | 新築の業務用建築物のZEB化に資する設備機器等の導入 | 静岡県環境資源協会 |
| (2)既存建築物のZEB化普及促進支援事業 | 既築の業務用建築物のZEB化に資する設備機器等の導入 | 静岡県環境資源協会 |
| (3)ライフサイクルカーボン削減型の新築ZEB支援事業 | ライフサイクルカーボンの算定を要件としたZEB化設備の導入 | 静岡県環境資源協会 |
| (4)業務用施設における省CO2化・熱中症対策等支援事業 | 熱中症対策等にも資する、業務用施設等の改修に際した高効率設備等の導入 | 静岡県環境資源協会 |
| (5)フェーズフリーの省CO2独立型施設支援事業 | 災害時の活動拠点等として利用可能な独立型施設への高機能空調等の導入 | 北海道環境財団 |
| (6)サステナブル倉庫モデル促進事業 | 営業倉庫への省CO2化・省人化機器および再エネ設備の同時導入 | 北海道環境財団 |
対象設備は、断熱材・窓、空調、換気、給湯、昇降機、太陽光、蓄電池、BEMSなど幅広く設定されています。補助率は区分により2/3〜1/6、延べ床面積に応じて上限3〜5億円が目安です。
環境省の報道発表本体には事業ごとの補助率・上限額の記載がなく、金額に関わる条件は各執行団体が示す公募要領で確認する必要があります。
対象は業務用の建築物・倉庫で、住宅は含まれません。新築・既存どちらのZEB化改修も対象に入っており、断熱改修や高効率設備の入れ替えを検討している事業者・建物所有者が使える枠組みです。
出典:環境省「令和7年度補正予算(三次公募)・令和8年度予算(二次公募)『建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業』の公募開始について」(2026年8月21日)
国土交通省|既存建築物省エネ化推進事業(LCCO₂評価実施型)
国土交通省が、民間事業者等が行う既存建築物の省エネ性能向上に資する改修等を支援する制度です。
主な事業要件
- 躯体(壁・天井等)の省エネ改修を伴うものであること(高機能換気設備を設置する場合は、躯体又は外皮の改修を伴うこと)
- 改修前と比較して20%以上の省エネ効果が見込まれること(ただし、外皮改修面積割合が20%を超える場合は15%以上)
- 改修後に一定の省エネルギー性能に関する基準を満たすこと
- 大規模建築物(2,000㎡以上)の改修の場合、ライフサイクルカーボン評価を実施すること(評価結果は国に報告)
補助率は1/3、補助上限は5,000万円(バリアフリー改修を伴う場合は2,500万円加算)が目安です。
「設備更新だけ」では対象にならず、躯体の省エネ改修とセットであることが前提という点が、他制度との大きな違いです。
出典:国土交通省「『建築物の省エネ改修工事』の提案募集を開始します!〜令和8年度既存建築物省エネ化推進事業の提案募集〜」(令和8年6月19日)
申請でつまずかない4つの段取り
制度を選んだ後、実務で滞りやすいポイントを4つ挙げます。
(1)公募締切から逆算してスケジュールを組む
公募期間はおおむね1〜2か月です。申請書類の作成には省エネ計算やZEB区分の確認が必要となるため、公募開始を知ってから動き出しても間に合わないことがあります。前年度の公募時期を目安に、事前に準備を進めておくのが現実的です。
(2)GビズIDプライムアカウントを早めに取得する
SIIの制度は、Jグランツ(電子申請システム)による公募受付が行われます。Jグランツの利用にはGビズIDプライムアカウントが必要で、取得に2週間程度の時間を要する場合があるとされています。公募開始前に取得を済ませておくことをおすすめします。
(3)ZEBプランナーの関与時期を確認する
「ZEB化診断・計画策定支援事業」のように、申請対象者がZEBプランナーに限定されている制度もあります。自社だけで完結しないため、パートナーの選定を早めに進める必要があります。
(4)交付決定前の発注は行わない
多くの補助制度では、交付決定前に着手した工事は補助対象外となります。契約・発注のタイミングは、必ず公募要領で確認してください。
2026年度の公募スケジュールと、今から動く場合の考え方
2026年度の主要制度の公募実績は次のとおりです。
| 制度 | 一次公募 | 二次公募 | 三次公募 | 本記事更新時点 |
|---|---|---|---|---|
| ZEB実証事業 | 5/12〜6/11 | 7/24〜8/17 | — | 受付終了 |
| ZEB化診断・計画策定支援事業 | 6/26〜10/16 | — | — | 受付中 |
| ZEB化・省CO2化普及加速事業 | 3/31〜5/12 | 6/22〜7/17 | 8/21〜9/30 | 受付中 |
| 既存建築物省エネ化推進事業 | 6/19〜7/31 | 未定 | — | 受付終了 |
この一覧から読み取れる傾向は、次の2点です。
1)公募は春に集中し、夏から秋にかけて締切を迎える
一次公募の多くは3月下旬から6月にかけて開始されています。年度の前半が勝負どころということです。
2)年度後半からでも打てる手はある
当年度の設備導入系の公募が締め切られていても、「ZEB化診断・計画策定支援事業」のように秋まで受付を行っている制度があります。まず診断・計画策定で足場を固め、翌年度の一次公募に万全の状態で臨むという進め方は、十分に合理的な選択です。
なお、国土交通省の既存建築物省エネ化推進事業については、第2回提案募集の実施は未定とされています。採択事業は2026年10月頃を目処に公表される予定です。
出典:環境共創イニシアチブ(SII)各事業ページ、環境省報道発表(2026年8月21日)、国土交通省報道発表(令和8年6月19日)
ZEB補助金に関するよくある質問(Q&A)
Q1. 今年度の公募は終わっていますが、来年度はいつ頃公募されますか?
2026年度は、環境省の普及加速事業が3月31日、SIIのZEB実証事業が5月12日に一次公募を開始しています。制度の継続や公募時期は年度ごとの予算編成に左右されるため確約はできませんが、年明けから情報収集を始め、3月下旬には各執行団体のサイトを確認するという動き方が目安になります。
Q2. 交付決定前に工事を発注してもよいですか?
多くの制度で、交付決定前に着手した事業は補助対象外となります。設計・発注のスケジュールは、交付決定時期を織り込んで組む必要があります。交付決定時期は制度により異なるため、公募要領でご確認ください。
Q3. 自社は大規模建築物ですが、環境省の制度は使えますか?
制度は規模で棲み分けられており、大規模建築物は経済産業省のZEB実証事業(新築10,000㎡以上/既存2,000㎡以上)が主な受け皿となります。環境省の普及加速事業は中小規模が中心です。詳細な規模要件は各公募要領でご確認ください。
Q4. ZEBプランナーへの依頼は必須ですか?
制度によります。「ZEB化診断・計画策定支援事業」は、申請対象者がZEBプランナー(フェーズ3に登録済みの法人)と定められています。建物所有者は、ZEBプランナーに業務を委託する形で関与することになります。
Q5. 自治体の補助金と併用できますか?
自治体独自の補助制度を設けている地域もありますが、国の制度との併用可否は制度ごとに条件が異なります。本記事では全国を対象とする国の制度を扱っていますので、地域の制度については所在自治体の窓口にご確認ください。
まとめ|補助金は「使えるかどうか」より「いつ動くか」
- ZEB関連の国の支援制度は、規模によって所管省庁が分かれます。大規模は経済産業省、中小規模は環境省、既存の躯体改修は国土交通省が主な受け皿です。
- 公募は年度ごとに区切られ、春に集中します。設計確定後に探し始めると当年度に間に合わないことがあります。
- 2026年度は「ZEB化診断・計画策定支援事業」が新設され、ZEB化に着手する前の診断・計画策定そのものが支援対象になりました。
- 補助率・上限額・要件は毎年度変動します。検討時は必ず最新の公募要領をご確認ください。
そして、どの制度を使う場合でも、ZEB化の成否を左右するのは設備の省エネ性能です。BEIの評価対象となる5設備(空調・換気・照明・給湯・昇降機)のうち、非住宅建築物では空調が一次エネルギー消費量の大きな割合を占めます。高効率空調の採用、とりわけ任意評定書を取得したモデルの選定は、BEI低減、ひいてはZEB区分の達成に直結します。
日本キヤリア株式会社では、ビル用マルチ空調システム「スーパーマルチu R32」をはじめ、BEI低減に寄与する高効率モデルをラインアップしています。
建築設計に不可欠なZEB・BEI・任意評定とは?
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