ZEBとは? 4つの区分・BEIとの関係・実現ステップを分かりやすく解説
ZEBとは年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指す建築物です。4つの区分とBEIとの関係、実現の3ステップ、メリットとコストの考え方を、環境省・国土交通省の公表資料をもとに、設計・設備選定に携わる方向けにわかりやすく整理します。
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは
ZEBの定義
ZEBは「Net Zero Energy Building」の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物を指します。
建物の中では人が活動しているため、エネルギー消費量を完全にゼロにすることはできません。そこで、省エネによって使うエネルギーを減らし、創エネによって使う分のエネルギーをつくることで、正味(ネット)でゼロに近づけるという考え方をとります。
出典:環境省 ZEB PORTAL「やさしい説明(ZEBとは?)」
ZEBは「削減率」で評価される相対的な指標
ここで押さえておきたいのは、ZEBが基準値に対する削減率で評価される相対的な指標だという点です。「電気を一切使わない建物」を意味するわけではありません。
なお、評価の対象となる設備は、空調・換気・照明・給湯・昇降機です。家電やOA機器などその他の消費機器は評価対象に含まれません。
出典:環境省 ZEB PORTAL「ZEBの定義」
ZEBの4つの区分
ZEBの実現・普及に向け、国は4段階のZEBを定量的に定義しています。
| 区分 | 省エネのみ(再エネを除く) | 再エネを含む | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 『ZEB』 | 50%以上削減 | 100%以上削減 | 規模の限定なし |
| Nearly ZEB | 50%以上削減 | 75%以上100%未満削減 | 規模の限定なし |
| ZEB Ready | 50%以上削減 | 要件なし | 規模の限定なし |
| ZEB Oriented | 事務所等・学校等・工場等:40%以上削減 ホテル等・病院等・百貨店等・飲食店等・集会所等:30%以上削減 +「更なる省エネルギーの実現に向けた措置」として未評価技術を導入 |
要件なし | 延べ面積10,000㎡以上 |
出典:環境省 ZEB PORTAL「ZEBの定義」(経済産業省資源エネルギー庁「ZEBロードマップ検討委員会とりまとめ」平成27年12月、同「ZEBロードマップフォローアップ委員会とりまとめ」平成31年3月より作成)
ZEB Orientedが追加された背景
ZEB Orientedは、延べ面積10,000㎡以上の建築物が新築着工に占める割合は棟数ベースでは1%程度である一方、エネルギー消費量ベースでは36%程度と影響が大きいことを踏まえ、平成31年に追加された区分です。大規模建築物は床面積に対して屋根面積が小さく、創エネだけで大幅な削減を賄うのが難しいという実情に対応しています。
また、「未評価技術」とは、省エネ計算プログラム(WEBPRO)で現時点では評価されていない技術のうち、公益社団法人空気調和・衛生工学会において省エネルギー効果が高いと見込まれ、公表されたものを対象とします。リストは今後も適宜見直されるとされているため、検討時は最新の情報をご確認ください。
BEIとの関係―区分はBEIで線引きされる
ZEBの4区分は、いずれも「基準一次エネルギー消費量からの削減率」で定義されています。この削減率は、建築物省エネ法で用いられるBEI(Building Energy Index)と表裏の関係にあります。
BEI = 設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量
BEIは値が小さいほど省エネ性能が高いことを意味します。定義上の削減率をBEIに置き換えると、次のように整理できます。
| 区分 | 省エネのみのBEI | 再エネを含むBEI |
|---|---|---|
| ZEB Ready | 0.50以下 | — |
| Nearly ZEB | 0.50以下 | 0.00超 0.25以下 |
| 『ZEB』 | 0.50以下 | 0.00以下 |
つまりZEB Readyは、省エネ基準(BEI 1.0)の半分の水準ということになります。
BEIの計算式や用途別の基準値については「BEIとは?計算式・用途別基準値・下げる方法を初心者向けに解説」で、省エネ適判・建築確認の手続きフローや任意評定の仕組みについては「BEIと建築物省エネ法とは?任意評定・2026年基準・建築確認まで解説」で、それぞれ詳しく解説しています。
また、BEIはBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の星評価にも用いられ、BELS評価書の中でZEB区分が併記されます。
出典:環境省 ZEB PORTAL「ZEBの定義」
なぜ今ZEBなのか|2025年義務化と2030年の到達点
ZEBが注目される背景には、省エネ基準そのものが段階的に引き上げられているという事情があります。
2025年4月|全新築建物への義務化
2025年4月、建築物省エネ法の改正により、原則としてすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務付けられました。
2026年4月|中規模非住宅の基準強化
2026年4月1日には、中規模非住宅建築物(延べ面積300㎡以上2,000㎡未満)の省エネ基準が引き上げられています。従来は用途を問わず一律BEI 1.00でしたが、用途に応じて現行基準から15〜25%強化され、大規模非住宅と同じ水準になりました。
| 用途 | 2026年度の水準 | 従来の中規模水準 |
|---|---|---|
| 工場等 | BEI 0.75 | BEI 1.00 |
| 事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等 | BEI 0.80 | BEI 1.00 |
| 病院等・飲食店等・集会所等 | BEI 0.85 | BEI 1.00 |
出典:国土交通省住宅局「中規模の非住宅建築物の省エネ基準が変わります」
実務上、特に注意が必要なのが適用の基準日です。国土交通省の資料では、施行日(2026年4月1日)以降に所管行政庁または登録建築物エネルギー消費性能判定機関へ省エネ適合性判定を申請する建築物に新基準が適用されるとされています。着工日でも建築確認の申請日でもない点にご留意ください。
出典:国土交通省「中規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げについて」
2030年度|ZEH・ZEB水準が目標に
この先の到達点として示されているのがZEB水準です。2025年2月に閣議決定されたエネルギー基本計画等では、2030年度以降に新築される住宅・建築物についてZEH・ZEB基準の省エネ性能の確保を目指すとされ、遅くとも2030年度までに省エネ基準をその水準まで引き上げることとされています。
具体的に示されている2030年度の目標水準は次のとおりです。
| 用途・規模 | 目指す一次エネ(BEI)の水準 |
|---|---|
| 大規模・中規模:事務所等、学校等、工場等 | 0.60 |
| 大規模・中規模:病院等、集会所等、ホテル等、百貨店等、飲食店等 | 0.70 |
| 小規模(300㎡未満) | 0.80 |
出典:国土交通省「中規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げについて」
ZEBは特別な先進事例ではなく、現行基準対応の延長線上にある到達点である、という捉え方が現実的といえます。
2026年4月からのBEI基準強化に向けた実務対応は「BEI基準を設備設計で達成するための空調選定ポイント」で整理しています。
ZEB化を実現する3つのステップ
ZEBは、次の3つの取り組みの積み重ねで実現します。
(1)負荷を減らす(パッシブ技術)
外皮の高断熱化、日射遮蔽、自然採光・自然換気の活用など、建物にかかる冷暖房・照明の負荷そのものを小さくする工夫です。
(2)効率よく使う(アクティブ技術)
減らしきれない負荷に対して、高効率な空調・換気・照明・給湯設備と、無駄なく動かす制御を組み合わせます。
(3)創エネ
太陽光発電等の再生可能エネルギー設備を導入し、削減しきれなかった分を補います。
環境省の資料でも、これら技術には導入の優先順位があるとされています。省エネ(1)(2)を先に積み上げ、足りない分を創エネで補うという順番です。創エネから先に検討すると、断熱性能や設備効率が低いまま発電量だけで帳尻を合わせることになり、太陽光パネルの設置面積が過大になりやすくなります。
出典:環境省 ZEB PORTAL「詳しい説明」
ZEB化の鍵を握るのは空調設備
なぜ空調で差がつくのか
3つのステップのうち、設計段階で最も差がつきやすいのが(2)高効率設備、なかでも空調です。
理由は明快で、評価対象となる5設備(空調・換気・照明・給湯・昇降機)のうち、非住宅建築物では空調が一次エネルギー消費量の大きな割合を占めるケースが多いためです。加えて、照明はLED化が広く進んだ結果、追加の削減余地が狭まりつつあります。
一方、空調設備は機器の効率や制御方式の違いがBEI値の差に直結します。ZEB Readyが求める50%削減という水準は、標準的な仕様の積み上げでは届きにくく、機器選定そのものを評価軸に据える必要が出てきます。
任意評定の活用
ここで有効なのが任意評定の活用です。任意評定とは、省エネ計算プログラムの標準的な入力方法では評価しきれない設備の性能について、登録建築物エネルギー消費性能評価機関が個別に評価・認定する制度です。メーカー独自の技術によってデフォルト値を上回る性能を持つ機器の場合、任意評定書を活用することで実際の性能に基づいた値を計算に反映でき、BEI低減効果を高められる可能性があります。
日本キヤリア株式会社では、ビル用マルチ空調システム「スーパーマルチu R32」をはじめ、BEI低減に寄与する高効率モデルをラインアップしています。R32冷媒がBEI達成の鍵とされる理由については、下記の資料で解説しています。
改正建築物省エネ法対策で「R32冷媒」が選ばれる理由
(資料ダウンロード)
ZEB化のメリットとコストの考え方
環境省は、ZEB化のメリットとして大きく次の4つを挙げています。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 光熱費の削減 | エネルギー消費量の削減に伴い、建物の運用に係る光熱費を削減できる |
| 快適性・生産性の向上 | 自然エネルギーの活用や、好みに配慮した空調・照明制御により、省エネと快適性を両立できる |
| 不動産価値の向上 | 環境・エネルギーに配慮した建物は、不動産としての価値や街としての魅力の向上につながる |
| 事業継続性の向上 | 非常時のエネルギー需要を削減でき、再エネ活用により部分的にエネルギーの自立を図れる |
出典:環境省 ZEB PORTAL「ZEB化のメリット」
光熱費については、創エネ設備がなくても、ZEB Ready(50%省エネ)を実現した場合、標準的なビルと比較して40〜50%程度の削減につながるとの試算が示されています(延べ面積10,000㎡程度の事務所ビルを想定。空調・換気・照明・給湯・昇降機のみを対象とし、全体の約3割を占めるOA機器等は含まない)。
出典:環境省 ZEB PORTAL「ZEB化のメリット」
一方で、ZEB化の検討にあたっては初期コストの増加が現実的な論点になります。高性能な外皮仕様や高効率設備の採用により、標準的な仕様と比べて建設コストは上振れする傾向があります。この差額に対しては国の補助制度が用意されており、補助率や上限額、公募時期は年度ごとに変動します。
制度の全体像と申請の進め方は「ZEB補助金【年度版】|施主が知るべき制度の全体像と申請の進め方」で解説しています。
ZEBに関するよくある質問(Q&A)
Q1. ZEBは太陽光発電がないと達成できませんか?
いいえ。ZEB ReadyとZEB Orientedは、再生可能エネルギーの導入を要件としていません。省エネのみで判定されます。まずZEB Readyを目指し、屋根・敷地条件が許せば創エネを加えて上位区分へ、という段階的な進め方が現実的です。
Q2. 省エネ基準に適合していれば、ZEBに近いといえますか?
いいえ。2026年4月以降の中規模非住宅の基準は用途別にBEI 0.75〜0.85ですが、ZEB ReadyはBEI 0.50以下です。基準適合とZEBの間には、まだ相応の開きがあります。
Q3. 自社の建物がどの区分を狙えるか、どう判断すればよいですか?
延べ面積・用途・屋根や敷地の条件によって現実的な目標区分は変わります。各区分の判定には用途ごとの細かい要件があり、実際の認証では所定の評価方法に基づく確認が必要です。まずは設計者や評価機関に相談し、現在地を把握することをおすすめします。
まとめ|まずは「現在地」の把握から
- ZEBは年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指す建築物で、基準値に対する削減率で評価されます。
- 区分は『ZEB』/Nearly ZEB/ZEB Ready/ZEB Orientedの4つで、いずれも削減率=BEIで線引きされます。
- 2025年4月に全新築で省エネ基準適合が義務化され、2026年4月には中規模非住宅の基準が引き上げられました。2030年度以降はZEH・ZEB水準が目標とされています。
- ZEB化は「負荷を減らす→効率よく使う→創エネ」の順で積み上げるのが基本です。
- 設計段階で差がつきやすいのは空調設備の選定。任意評定書取得モデルの活用も有効な選択肢です。
まずは、自社の建物がどの区分を狙えるのかを把握することが第一歩になります。
建築設計に不可欠なZEB・BEI・任意評定とは?
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