📌 本記事の対象時点と更新について
本記事は2026年10月時点で公表されている法令・公的資料に基づいています。冷媒に関する規制は段階的に見直されており、対象となる機器の範囲が今後広がる予定です。
実際に機器を選ぶ際は、経済産業省の公表情報や当社の営業担当で最新の内容をご確認ください。
最終更新:2026年10月
「R410Aのエアコンは、もうすぐ使えなくなるのでしょうか?」設備更新の時期が近づいたお客様から、こうしたご質問をいただくことが増えています。
結論から言うと、いまお使いのR410A機器を使い続けることを禁止する法律はありません。
一方で、新しく導入する業務用エアコンは、R32冷媒の機種への切り替えが進んでいます。
大切なのは「すぐに交換すべきか」ではなく、「いつ、どう更新するか」を計画しておくことです。
本記事では、R410Aをお使いの方がご自身の設備の今後を判断できるよう、法規制のポイントと更新時期の考え方を整理します。
R32への移行が進んでいる背景
改正建築物省エネ法と空調設備
2025年4月に施行された改正建築物省エネ法で、原則としてすべての新築建築物に省エネ基準への適合が義務づけられました。建物の省エネ性能を評価する際、空調設備は消費エネルギーの大きな割合を占めます。そのため、どの空調機器を選ぶかが、建物全体の省エネ性能を左右します。
この流れは、新築だけの話ではありません。既存建物の改修や設備更新でも、省エネ性能の高い機器を選ぶことの重要性が増しています。
建物の省エネ性能を示すBEIの考え方については「BEIとは? 計算式・用途別基準値・下げる方法を初心者向けに解説」をご覧ください。
冷媒規制が進む理由
業務用エアコンに使われるフロン類(HFC)は、地球温暖化への影響が大きいガスです。影響の大きさは地球温暖化係数(GWP)で表されます。
フロン排出抑制法の「指定製品制度」は、エアコンなどの製造・輸入業者に対し、出荷する製品の冷媒について「GWPの目標値」と「目標年度」を定める制度です。出荷台数で加重平均したGWPが目標値を下回るよう求めています。
業務用エアコンの主な区分では、次のように目標が設定されています。
| 製品区分 |
従来の主な冷媒(GWP) |
目標値 |
目標年度 |
| 店舗・事務所用エアコン |
R410A(2090) |
750 |
2025年度 |
| ビル用マルチエアコン(新設および冷媒配管一式の更新を伴うもの。冷暖同時運転型・寒冷地用等を除く) |
R410A(2090) |
750 |
2025年度 |
| 設備用エアコン(新設および冷媒配管一式の更新を伴うもの。電算機用・中温用など特定用途を除く) |
R410A(2090) |
750 |
2027年度 |
いま対象から外れている冷暖同時運転型や寒冷地用のビル用マルチなども、2027年4月以降、順次対象に加わる予定です。
出典:経済産業省「指定製品製造業者等に対する規制」(令和7年4月1日時点)/一般社団法人 日本冷凍空調工業会「フロン排出抑制法の指定製品において環境影響度の目標値及び目標年度が定められたものの一覧表」
なぜR32が注目されているのか
R32のGWPは675で、R410A(2090)の約3分の1です。目標値の750を下回ります。
「R32冷媒はいつから使われているのか」という点では、店舗・事務所用エアコンにはもともと能力区分ごとに目標年度(2020年度・2023年度)が設定されていました。メーカー各社はこれに合わせてR32機への切り替えを進めてきました。ビル用マルチでも2025年度の目標に向けて移行が進み、現在、新たに導入する業務用エアコンの選択肢はR32機が中心になりつつあります。
R32冷媒そのものの特徴や、R410Aとの違いについては「次世代冷媒R32の基礎知識|R410Aとの違いと義務化の背景をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
R410Aはいつまで使用できるのか
現在使用中のR410A機器は継続利用できる
「R410Aはいつまで使えるのか」という疑問への答えは、「使用期限は法律で定められていない」です。
指定製品制度は、メーカーがこれから出荷する製品に対する目標です。すでに設置されているR410A機器の使用を禁止するものではありません。いまお使いの機器は、フロン排出抑制法の点検・記録の義務を守っていれば、引き続き使用できます。
管理者に課される点検義務の内容は「フロン排出抑制法の点検義務|対象機器・点検頻度・罰則を実務目線で整理」で整理しています。
ただし更新時には注意が必要
一方で、更新する際には次の点に注意が必要です。
-
選べる機種が変わる:新しく導入する機器は、R32など低GWP冷媒の機種が中心になります。
-
対象範囲が広がる:冷暖同時運転型や寒冷地用のビル用マルチなども、2027年4月以降、順次規制の対象に加わります。
-
R32の安全対策を確認する:R32は微燃性の冷媒です。特にビル用マルチは、部屋の広さなどに応じて、冷媒が漏れたときの安全対策が必要かどうかを確認します。
-
故障時の修理:機器が古くなるほど、修理用部品の入手が難しくなる場合があります。
ビル用マルチをR32の機種に更新する際の確認事項は「R32採用のビル用マルチ 選定時に確認すべき5つのポイント」で解説しています。
「今すぐ交換」ではなく「更新計画」が重要
規制を理由に、まだ使える機器を慌てて交換する必要はありません。リスクが大きいのは、故障をきっかけに準備のないまま更新するケースです。
突然の故障では、機器を比べて選ぶ時間も、工事の日程を調整する時間もありません。夏場や冬場に空調が止まれば、営業やテナントへの影響も避けられません。いまの設備の状態を把握し、更新の時期と予算を前もって計画しておくことが、結果として最もリスクとコストを抑える方法です。
空調設備の更新を検討すべきタイミング
設備の更新時期は、使用年数だけで決めるものではありません。次の4つの視点を組み合わせて判断します。
使用年数
業務用空調は、使用年数が10〜15年を超えると、更新を検討し始める目安になります。ただし、耐用年数と実際の機器の寿命は同じではありません。設置環境やメンテナンスの状況によって劣化の進み方は変わるため、年数は「点検を手厚くし始める合図」と考えるのが現実的です。
故障頻度
修理の回数が増えてきたら、更新を考える目安になります。修理費が積み重なると、更新費用との差は縮まっていきます。部品の供給状況も含めて、「あと何年使うか」を判断する時期です。
エネルギーコスト
空調は省エネ技術の進歩が著しい分野です。10〜15年以上前の業務用空調と最新機種を比べると、消費電力を大きく減らせるケースも珍しくありません。
また、日本冷凍空調工業会のデータでは、定期的なメンテナンスをせずに運転を続けると、メンテナンスをした場合に比べて消費電力が約40%大きくなった例があります。電気料金が上がり続けている場合は、機器の劣化が原因の可能性もあります。
建築物省エネ対応
大規模な改修や増築を予定している場合、建物の省エネ性能の向上が求められることがあります。空調は省エネ性能への影響が大きい設備なので、改修計画とあわせて空調の更新を検討すると効率的です。
R32への更新で得られるメリット
省エネ性能向上
最新機種は、圧縮機やインバーターの制御技術が進んでいます。そのため、古いR410A機と比べて消費電力を抑えやすくなります。運転コストの削減は、更新費用を回収する根拠にもなります。
環境負荷低減
R32のGWPはR410Aの約3分の1です。万一冷媒が漏れた場合も、温暖化への影響を小さく抑えられます。脱炭素への取り組みや、テナント・投資家への環境配慮の説明にも役立ちます。
将来の規制への対応
冷媒規制は、今後も対象範囲が段階的に広がる予定です。更新のタイミングで低GWP冷媒の機種を選んでおけば、その後の規制の見直しにも対応しやすくなります。
設備更新計画を立てやすい
新しい機器で更新の起点をそろえると、次回以降の更新時期や保守の予算を見通しやすくなります。複数の系統を一度に計画的に更新すれば、工事の効率化も図れます。
こんな場合は早めの検討がおすすめ
次の項目に当てはまるものが多いほど、早めに更新計画を立てることをおすすめします。
- ☐ 使用年数が10年を超えている
- ☐ ここ数年、故障や修理の回数が増えている
- ☐ 修理部品の手配に時間がかかったことがある
- ☐ 使い方は変わらないのに、電気料金が上がっている
- ☐ テナントの入れ替えやレイアウト変更を予定している
- ☐ 大規模な改修や外装工事を予定している
- ☐ 冷えにくい・暖まりにくいといった声が出ている
- ☐ R22など、さらに古い冷媒の機器が残っている
2つ以上当てはまる場合は、まず現状の設備の調査から始めることをおすすめします。
R410AからR32への更新でよくある質問
Q1. R410Aは今後使用禁止になる?
いまお使いのR410A機器の使用を禁止する規定はありません。指定製品制度は、メーカーが新たに出荷する製品を対象とした制度です。ただし、使い続ける間はフロン排出抑制法に基づく点検と記録が必要です。
Q2. 既存配管は利用できる?
R410AからR32への更新では、条件によって既存の冷媒配管を再利用できる場合があります。配管の径・肉厚・劣化状態、配管の長さなどを確認したうえでの判断になります。配管を再利用できれば、工期と費用を抑えやすくなります。対応の可否は、現地調査をしたうえでご確認ください。
Q3. 更新コストはどれくらい?
更新費用は、機器の能力や台数、配管を再利用できるか、室外機の搬入や設置の条件、工事を夜間・休日に行う必要があるかなどによって大きく変わります。比べる際は初期費用だけでなく、更新後の電気料金の削減分と修理費の削減分も含めて見ることが大切です。
Q4. 補助金は利用できる?
省エネ型の設備への更新には、国や自治体の補助金を使える場合があります。補助金の多くは年度ごとに公募され、要件や受付期間が異なります。更新を検討する段階で、早めに最新の公募情報を確認してください。
ZEB化を伴う大規模な改修では、国の補助制度を使える場合があります。制度の全体像は「ZEB補助金【2026年度版】施主が知るべき国の制度の全体像と申請の進め方」でまとめています。
まとめ|計画的な更新が設備投資成功のポイント
- いまお使いのR410A機器を使い続けることを禁止する法律はありません。
- 指定製品制度により、新たに導入する業務用エアコンはR32など低GWP冷媒の機種へ切り替わっています。
- 冷媒規制の対象範囲は、2027年4月以降も段階的に広がる予定です。
- 更新時期は、使用年数・故障頻度・エネルギーコスト・建築物省エネ対応の4つの視点で判断します。
- 故障をきっかけに慌てて更新するのではなく、計画的に更新することが、コストとリスクを抑えるポイントです。
既存設備の調査や更新時期のご相談も承っています。お気軽にお問い合わせください。
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